コーバより

木々が大分鮮やかな緑を身にまとい始めました。

さてコーバでは本日よりヤマザクラのダイニングテーブルの
制作を開始しました。

以前少し触れましたが、まだ木工とはよべないような状況でし
たが、小刀で箸らしきものを削っていました。
その時、クリやカエデと共に初めて手にした材料が山桜でした。
木目や硬さなんかも三者三様でしたが、中でも匂いがとりわけ
記憶に残っています。クリやクルミなどはふんわりと鼻全体に
ほのかに薫りが漂う感じです。対して山桜は、かなり鋭く鼻に
刺さるような感じです。鋭く鼻をつくその薫りにいつも思春期の
頃の春先の事を思い出します。

昔、新学期の頃に咲く桜があまり得意ではありませんでした。
それは今思えば、あの華やかさと表裏一体の脆くはかない感じ
のせいでしょうか。
或いは、花は咲き誇れど、身の引き締まるような心持ち冷たい
春の空気が自身の新たな段階への不安を引き立たせるからで
しょうか。
そしてそんな思春期ならではの好感をもてる感情が徐々に失わ
れ始めた頃から、あの花や薫りを美しいものだと愛でられるよう
になったのでしょうか？

山桜を扱うと、この道を歩みたいと悶々としていた時期と重ね合
わせて、そんな感情を思い出さずにはいられません。
木に好きも嫌いもありません。
ただ山桜は私にとって材の特性を離れて特別な感情を抱かせる
木なのかもしれないと感じます。

コーバ裏の山では鬱金桜が満開の八重の緑に風を孕んでいます。
遠目に見るとそれは花とも緑とも見分けがつくにくいのですが、
それはやはり花でそれなりに華やかです。